◆8月号(88巻9号) 財政法学の体系的再構築に向けて
財政の法的統制の確保は喫緊の課題である。にもかかわらず、十分な議論が積み重ねられていない現状を踏まえ、気鋭の研究者が集い財政法学の体系的再構築を目指す渾身の特集。
◆財政・会計・予算
1 はじめに
(1) 本特集について
財政赤字のコントロールをはじめとして、財政の法的統制の確保は喫緊の課題である。けれども、本誌86巻11号から13号の「憲法学のゆくえ」連載でも指摘されたように、この問題については、一部の例外を除き、活発な議論がなされていないともいわれる状況にある。
その原因には、実質的意味の財政法の大部分が内部法という形で存在し、政策当局以外には見えにくいことなどもあろう。しかしながら、同時に、高度に複雑化した財政につき、その実態の把握が困難であることや、そのような現代財政の複雑な実態を十分に把握するための法的な道具立てを学説の側が用意してこなかったことにも問題があると考えられる。 … (本誌より抜粋/本文内容一部参照できます!)
—— 2016年8月号目次——
◇特集=財政法学の体系的再構築に向けて
財政・会計・予算――財政法の基礎を巡る一考察 … 片桐直人
財政と金融市場の「法的な距離」――財政法学の研究課題の提示に向けて … 藤谷武史
財投改革と財政の金融的側面の変容 … 上田健介
財政・時間・責任――時間整合的な財政統制の限界と可能性 … 神山弘行
予算編成過程と将来予測 … 宍戸常寿
▼小特集 9条裁判を再考するために
──深瀬忠一のactualité
九条訴訟という錯綜体 … 蟻川恒正
恵庭訴訟の原点――権力によって選ばれた時と国民の決意する時 … 笹川紀勝
恵庭・長沼裁判の今に活きる教訓 … 内藤 功
北海道と9条 … 西村裕一
深瀬9条論の今日性――「丸山9条論への応答」として読み解く … 岡田信弘
カナダの尊厳死・安楽死法について … 松井茂記
著作者の権利と事前抑制の法理(補論)
――著作権判例百選事件保全異議審決定を受けて … 木下昌彦
【連載】憲法学からみた最高裁判所裁判官・16
不撓の自然法論者――田中耕太郎 … 尾形 健
【連載】「国家と法」の主要問題・14
「隔離」される集会、デモ行進と試される表現の自由 … 阪口正二郎
【連載】民法理論の対話と創造・3-1
差止請求権理論の課題と展望(上) … 根本尚徳
差別的言動の法的規制【法律時評】 … 阿部浩己
※隔月連載の「グローバル化と法の変容」は次号掲載と致します。