◆6月号(82巻7号) 裁判員時代における死刑問題
裁判員制度の実施と政治状況の変化により、死刑制度を改めて見直すべき機会となっている今こそ、市民が参加する裁判と死刑制度の問題について多角的に検討する。
◆裁判員裁判から死刑を問い直す
裁判員法が施行されてから一年近くが経過した。2009年8月3日に東京地裁で審理が始まった第一号事件を皮切りに、各地で公判も積み重ねられてきた。しかしながら、争点が多い事件については公判前整理手続きに時間を要することや、裁判員裁判対象事件について検察官が慎重な基礎方針をとっていると考えられることなどが手伝って、今のところ裁判員裁判において被告人の犯人性が本格的に争われたケースはなく、無罪判決は一件もない。他方、検察官が無期懲役を求刑し、求刑通りに無期刑が言い渡された例は数件あるものの、死刑が求刑されたケースも死刑が言い渡されたケースも一件もない。……(本誌より抜粋)
<特集「裁判員時代における死刑問題」より>
【座談会】裁判員裁判の下で死刑の縮減・廃止を展望できるか
… 水谷規男(司会)・後藤貞人・田鎖麻衣子・石塚伸一
裁判員裁判が始まり、市民に直接死刑の是非が問われることになったことを踏まえて、今後予想される裁判員が死刑の是非を判断するケースで何が問題になるのか、そして裁判員制度の導入をいかにして死刑の縮減・廃止に結びつけていくことができるのか……。死刑問題の専門家の先生方にお集まり頂き、ご意見を伺いました。
—— 2010年6月号目次 ——
◇特集=裁判員時代における死刑問題
裁判員裁判から死刑を問い直す――本特集の趣旨 … 水谷規男
大量死刑時代の終焉?――厳罰主義の後始末 … 石塚伸一
《座談会》裁判員裁判の下で死刑の縮減・廃止を展望できるか
… 石塚伸一・後藤貞人・田鎖麻衣子・水谷規男(司会)
死刑判断と陪審の精神的負担――合衆国の経験から … 岩田 太
死刑事件と鑑定 … 岩田 務
誤判と死刑――米国イノセンス・プロジェクトからの示唆 … 指宿 信
国際人権法と死刑 … 熊谷 卓
死刑と憲法――裁判員制度の実施に際しての一視点 … 高井裕之
概要・振込法の全体的構造――新たな理論構成の試み … 安達三季生
「SLAPP」とは何か …烏賀陽弘道
市民法学とホロコースト …篠原敏雄
債権法改正の重要な問題点と実務家からの改正試案 …児玉隆晴
政党と討議民主主義 …毛利 透
「多角的法律関係」規律のための法理形成試論 …伊藤 進
「六〇年安保」から五〇年【法律時評】 …森 英樹