◆8月号(82巻9号) 「刑罰からの自由」の現代的意義

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社会の変化により刑罰の内容に変容が生じる。刑罰からの自由と他の利益が衝突する場合の調整原理を、刑事法からの分析と、それに対する他の法領域からのコメントを合わせて掲載する。

 
<特集 「刑罰からの自由」の現代的意義 より>

◆「刑罰から自由な領域」の再定義と明確化

一 問題の所在
 筆者の認識では、ヨーロッパに淵源を有し日本が継受した近代の刑事法では、他人にとって有害(あるいは迷惑)な行為をしない限りで、市民は何をしてもよいのであり、その限りでは刑罰の対象とならないということが、刑事立法や刑法解釈の原則とされてきたように思われる。これは一般に、「侵害原理(harm-to-others-principle)と呼ばれているものである。……(本誌より抜粋)
 

【特別企画】長谷川正安先生を語る

長谷川先生の学界・論壇・社会運動等におけるご活躍と小誌へのご尽力を想起しつつ、没後一周年を期して、追悼特集を企画しました。第一部では、先生と親交のあった多くの方々のなかからごく一部の方にメッセージを寄せていただき、第二部では、論争を通した学問の発展を重視された先生の学風にかんがみ、先生の学問的軌跡を批判的に検討していただく論考を寄稿して頂きました。

 

——  2010年8月号目次 ——

 

◇特集=「刑罰からの自由」の現代的意義

総論
 「刑罰から自由な領域」の再定義と明確化 … 松宮孝明

各論① ビラ配布と住居等侵入罪
 集合住宅でのポスティングの意味と刑事規制の限界
 ――立川自衛隊官舎事件・葛飾マンション事件最高裁判決 …
安達光治
 ビラのポスティングと表現の自由――国際人権基準に照らした覚書 … 戸田五郎

各論② 個人による表現と名誉毀損罪
 インターネット上の名誉毀損に対する刑法的規制――ラーメンフランチャイズ事件判決 … 金澤真理
 名誉毀損罪と表現の自由――憲法の視点から … 鈴木秀美
  (※本文内容に一部訂正があります。→訂正・追録履歴

各論③ 経営判断と背任罪・経済犯罪
 経済活動における刑事規制――北國銀行事件・長銀事件・日債銀事件最高裁判決 … 品田智史
 取締役の刑事責任をめぐる三つの裁判例――会社法の観点から … 弥永真生

各論④ 弁護士業務(民事介入)と共犯責任
 強制執行妨害と専門家の助言――安田弁護士事件判決 … 石塚伸一
 弁護士の助言と強制執行妨害幇助罪――石塚論文への民事法の観点からのコメント … 松岡久和

各論⑤医療と過失責任
 医療と過失責任の限界――福島県立大野病院事件判決の分析と新たな解決モデル … 甲斐克則
 医療事故の法的責任をめぐる刑事法と民事法の役割分担――甲斐教授へのコメント … 手嶋 豊

 

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 第一部=長谷川先生の思い出
  長谷川さんのマルクス主義法学への想い … 藤田 勇
  長谷川憲法学について思う … 杉原泰雄
  追想――一九六一年モンパルナスに始まって … 樋口陽一
  長谷川正安先生と国家主権論 … 松井芳郎

 第二部=長谷川法学の軌跡
  「長谷川法学の軌跡」序論 … 森 英樹
  長谷川憲法学と比較憲法史研究 … 辻村みよ子
  長谷川憲法学または法学の方法覚書 … 村田尚紀
  長谷川憲法学と社会主義法研究 … 竹森正孝
  二つの憲法との格闘――憲法史、憲法学史における足跡 … 渡辺 治
  長谷川憲法学と基本的人権研究 … 大久保史郎
  長谷川憲法学における判例研究 … 小林 武

 

民法典はどこへいくのか】 その1

法制審の議論にみる民法典改悪への懸念 … 加藤雅信


諮問的レファレンダムの可能性 … 井口秀作
憲法から見る普天間問題【法律時評】 … 高良鉄美