2・3月号所収「介護人材不足——介護報酬・加算で人材は集まるか…栃本一三郎」の注

1) 日本介護福祉士会の調査は、行政が行っている調査と比較すると興味深いデータとなっている。1つは、前年の同じ調査における平均的な給与は上がっている階層もあれば、そうでない階層もあるという事実。また平均すると5000円程度の引き上げにしかなっていないということである。また「平成28年7〜9月の3カ月における1カ月分の平均的な給与(税込み)はおよそいくらですか」という問い(通勤手当、扶養手当は含むが、賞与は除く)に対して、平均は21万2000円であったが、15万から20万未満が28.9%、20〜25万未満が28%、25〜30万未満が11.4%、30〜35万未満は6.6%、35万以上が、5.6%となっている(無回答5%)。この調査は介護福祉士の資格所得者であり、かつ介護福祉士であって管理職のものも含まれている。従来の賃金実態調査では、いわばヒラの現業員の給与しかわからず、かつすでに述べたように雇用や勤務形態、勤続年数が違うものを比較しているデータであり、このことも介護従事者の賃金が低いことを印象付ける(それを狙うには良いデータであるが)原因となっている。

2) 経営実態調査は介護報酬が事業の生命線であることからきわめて重要である。介護保険制度導入以降に行われ、それなりの努力がなされているが、介護報酬の水準の適切さを検証するためのデータとしては課題がないわけではない。客体数や客体の偏り、在宅サービス事業者などのデータの信ぴょう性等課題はあり、それらに基づいて検証した場合、数字のみがとりあげられ、その元となっている限界について一般には知られないということが起きる。準市場におけるサービス価格が介護報酬という人為的、人工的な水準設定によっていることの限界についてより注意が必要であり、これらの解消策にもなることとして2つ取り上げておく。どちらも、統制価格から外すということである。

1つが、ドイツと同じように現物サービスとともに現金給付を併用させ、現金給付を使ってサービスを購入した場合、基準や規制なしに価格を自由に設定し、時間に縛られないサービスが提供できる。また、同じことが保険外サービス、いわゆる混合介護についてもいえる。細かな規制があるために効率的、効果的、そして利用者本位のサービスが提供できないということが起きており、せっかくの市場経済の下で行われるサービスであるにも関わらず、サービスやマネジメントのイノベーションが起きにくい環境が現在の介護サービス市場といえる。

混合介護と現金給付化がこれからのわが国の介護人材と介護サービスのイノベーションにとって必須の事柄であると考える。