書籍詳細:原子力損害賠償制度の成立と展開

原子力損害賠償制度の成立と展開

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  • 紙の書籍
定価:税込 5,720円(本体価格 5,200円)
在庫なし
発刊年月
2015.08(下旬刊)
ISBN
978-4-535-52124-7
判型
A5判
ページ数
312ページ
Cコード
C3032
ジャンル

内容紹介

我妻文書、原子力委員会文書等の第一次資料に基づき、原子力損害賠償制度の成立史を解明。賠償制度の在り方を根本から検討する。

目次

はしがき

目次



はじめに



1 原賠法の特徴

2 原賠法立法史についての従来の研究

3 本書の特徴:一次資料利用と理論的位置づけ

4 本書の構成



第1章 原子力開発の開始と原子力危険(昭和29年年)



I 原子力開発の助走(昭和29・30年)

1 原子力開発:原子力利用準備調査会と我妻

 (1) 濃縮ウラン受入問題と我妻

   (a)濃縮ウラン受入問題 (b)謄写版資料 (c)手書き資料 (d)幹事会用議事要旨 (e)交渉開始決定についての我妻書込み

 (2) 原子力研究開発体制整備問題

2 原子力危険:ビキニ被ばく被害における原子力損害



II 原子力委員会と原子力安全問題(昭和31・32・33年)

1 原子力開発:原子力委員会による急速な展開

 (1) 原子力基本法と原子力委員会

   (a)原子力基本法 (b)原子力委員会による原子力開発の促進 (c)原産の誕生

 (2) コールダーホール型炉輸入の決定と原電の設立

   (a)英国炉導入の経緯 (b)民間会社による発電用原子炉開発

2 原子力危険:原子炉事故問題の登場

 (1) 英国との交渉

   (a)ウインズケール原子炉事故 (b)英国による日英原子力協定免責条項要求

 (2) 米国での賠償制度立法

   (a)プライス・アンダーソン法の成立 (b)事故予想

 (3) 国内における動向

   (a)コールダーホール型炉をめぐる議論 (b)教育用・研究用原子炉紛争 (c)東海大学原子炉設置問題

 (4) 国内法制の整備

 (5) 賠償法制研究の開始

   (a)原産による賠償研究 (b)中間報告書の概要 (c)金沢「国の補完作用」論文 (d)エーレンツワイグ災害保険理論



第2章 原子力災害補償専門部会(昭和33・34年)



I 原子力災害補償専門部会の設置

1 原子力委員会による専門部会設置

 (1) 原子力委員会の「反省」

 (2) 国家補償についての曖昧な態度

2 我妻部会長

3 全体の審議経過

II 原子力保険審議(第1回から第10回)

1 諮問事項

2 国家補償問題

 (1) 大蔵省の慎重姿勢

 (2) 国家補償と許認可責任

3 原子力保険問題

 (1) 保険付保金額

 (2) 地震免責問題

   (a)地震と賠償責任 (b)地震と保険 (c)英国保険市場の消極姿勢 (d)審議の要約



III 法案の大要の具体化(第11回から第15回)

1 昭和34年7月10日案

2 法案重要事項集中審議(第11、12、13回)

 (1) 大蔵省主計局、法制局等の新委員追加

 (2) 国家補償の必要性(第11回)

 (3) 原子力事業者の責任制限(第13回)

 (4) 地震と原子力事業者の免責(第12回)

   (a)第12回での審議 (b)関東大震災の「3倍」の意味 (c)設置許可そのものの妥当性

 (5) 賠償請求に関連する諸問題

   (a)因果関係 (b)求償権 (c)時効

3 昭和34年9・10月「問題点の再整理」(第14、15回)

 (1) 星野・竹内「問題点の再整理」

 (2) 法案の基本的制度

   (a)国家再保険構想の排除 (b)国家補償方式の採用 (c)国家の具体的な支払方式 (d)国家補償の上限 (e)大蔵省主計局委員の根本的異論

4 専門部会外部の動き

 (1) 「原子力災害補償問題研究報告書」

 (2) 東海村発電所公聴会および中曽根委員長講演

   (a)コールダーホール原子炉安全問題公聴会(7月31日) (b)中曽根原子力委員長講演「原子力と政治」(9月25日)

 (3) 私法学会での我妻原賠法制論(34年10月)

   (a)竹内昭夫報告「保険及び国家補償の問題」 (b)我妻発言



IV 専門部会による法案作成と個別条文審議(第16、17回)

1 賠償責任と政府の措置

 (1)年10月27日案

 (2) 第16回審議

   (a)免責文言の書きぶりについて (b)事業者免責の場合の国家の措置(第16回での我妻消極論) (c)原子力事業者の賠償責任規定:本案か代案か

 (3) 第17回審議

   (a)保険会社委員試案(第17回) (b)事業者免責の場合の国家の措置(我妻の積極的姿勢) (c)国家補償は有限か無限か

2年10月27日案のその他の規定

 (1)月27日案

 (2)月27日案審議

   (a)原子力損害の範囲 (b)求償権についての特約



V 答申案の採択と少数意見(第18回)

1 大蔵省主計局長の答申延期論

2 答申案の内容

3 事業者責任と国の措置

 (1) 答申案の内容

 (2) 大蔵省主計局委員の批判



VI 昭和34年12月12日答申

1 答申総論

2 答申各論の国家補償論

 (1) 我妻の答申論

 (2) 加舎科技庁原子力局政策課課員の答申解説

   (a)制度の目的 (b)制度適用の範囲:原子力事業・原子力損害・原子力事故 (c)原子力事業者の賠償責任 (d)事業者の責任制限 (e)国家補償

3 答申の意義

 (1) 新聞報道

 (2) 原子力災害補償専門部会(我妻部会)の失敗と遺産



第3章 原子力損害賠償法制の確立(昭和35・36年)



I 昭和35年2月24日内定と事業者責任制限論

1 原賠法案の作成

 (1) 法案のための事務的折衝と政治的調整

 (2) 法案の準備

   (a)1月28日案 (b)GE社との質疑 (c)2月17日案

 (3) 事務的折衝文書の作成

   (a)「原子力災害に対し国家補償措置を必要とする根拠(案)」 (b)大蔵省法規課案

2 「党」による調整のための2月24日内定

 (1) 原子力委員会による大蔵省案問題点提示

 (2) 「党」による大蔵省への働きかけのための「内定」案

   (a)2月17日内定案 (b)内定案の修正:損害額が50億円以下の場合 (c)内定案の修正:原子力事業者の責任制限 (d)内定案についての議論:損害が50億円を超える場合 (e)損害賠償処理委員会

 (3) 2月24日内定の成立

   (a)2月24日第10回委員会 (b)原子力委員会2月24日内定



II 3月26日決定と事業者無限責任

1 事業者有限責任への批判

 (1) 法制局の責任制限違憲論

 (2) 責任制限違憲論への原子力委員会の対応

 (3) 法制局違憲論の重み

2 大蔵省主計局による国家補償消極論と原子力委員会

 (1) 大蔵省の軟化傾向

   (a)大蔵省の軟化(第11回委員会(2月27日臨時会)) (b)大蔵次官と主計局長の相違(第12回委員会(3月2日))

 (2) 大蔵省の「不信行為」(第13回委員会(3月9日))

3 原子力委員会と大蔵省の妥協

 (1) 事業者責任制限の放棄

   (a)第14回委員会(3月12日) (b)第15回委員会(3月16日)

 (2) 3月26日決定案の準備

   (a)第16回委員会(3月22日臨時会) (b)第17回委員会(3月23日) (c)第18回委員会(3月26日臨時会)



III 法案閣議決定と「援助を行なうものとする」文言

1 4月2日案と法制局審査:政府は援助「できる」

 (1) 4月2日案

 (2) 法制局法令審査

2 自民党法令審査:援助「できる」と援助を行なう「ものとする」

 (1) 自由民主党法令審査と4月21日案

   (a)自民党法令審査概論 (b)原賠法案の自民党法令審査 (c)4月21日法案と4月22日要綱

 (2) 4月22日要綱修正による4月28日要綱の成立

3 閣議請議法案と閣議決定法案:16条を2項に分割

 (1) 次官会議での閣議請議案

   (a)4月21日案からの展開 (b)科学技術庁閣議請議案と次官会議 (c)原子力委員会

 (2) 閣議決定法案の成立(和文タイプ刷り閣議請議案)

   (a)閣議決定法案 (b)閣議決定後の原子力委員会



IV 想定問答と国会審議

1 原賠法案想定問答

 (1) 総括的事項

 (2) 原子力損害賠償責任関連事項

 (3) 損害賠償措置に関する事項

 (4) 国の措置に関する事項

2 昭和35年5月の国会審議



V 補償契約法案の成立

1 原子力災害補償専門部会(第2次)の設置

 (1) 第2次専門部会の発足

 (2) 審議の概要

   (a)審議経過 (b)補償損失についての包括主義とその批判 (c)法律による列挙主義と政令による個別的救済

2 補償料率の算定



VI 原賠二法の国会審議

1 昭和36年の国会審議

 (1) 政府関係者の説明

 (2) 我妻の説明

 (3) 我妻以外の参考人発言

2 原賠法のあり方の確定時期



第4章 原子力損害賠償制度の展開:原賠法制の批判と原賠法の適用



I 原賠法への批判

1 全損害国家補償論の展開

 (1) 昭和36年10月段階の「泣き寝入りさせない」論

 (2) 昭和38年の「大きく出る」国家補償論

 (3) 昭和40年の「事業者と国との共同連帯の精神」論

2 賠償制限違憲論への批判



II 昭和46年改正

1 原賠法改正の環境

 (1) 原賠法当時からの問題

   (a)国際条約への対応 (b)責任制限 (c)従業員災害及び求償権

 (2) 昭和46年改正当時での事業者責任論の環境

   (a)事業者責任限定論導入に有利な要素 (b)責任限定論に不利な要素

2 専門部会の審議経過

 (1) 審議全体の流れ

 (2) 事務局の事業者無限責任維持姿勢

   (a)事務局からの「答申の骨子(案)」 (b)我妻メモ (c)事務局案への反応と我妻の意見 (d)星野の現行制度維持論

 (3) 専門部会答申

 (4) 想定問答と国会審議



III 原賠法の適用

1 平成11(1999)年東海村JCO事故と原賠法

2 東電福島事故と賠償法



おわりに:不法行為法と原賠法



I 原子力賠償制度の歴史的展開



II 我妻構想の意義

1 我妻構想の意義

 (1) 全損害国家補償論

 (2) 事業者責任制限

2 責任制限違憲論

 (1) 米国における違憲訴訟

 (2) フランス法

 (3) 日本法

3 不法行為法の中の原賠法

 (1) 公害法としての原賠法

 (2) 災害法としての原賠法



III 原子力開発における国家機構と産業

1 国家機構間の対立の意義

 (1) 我妻の大蔵省主計局論

 (2) 官僚OBの主計局論

2 国家機構と産業



巻末資料

資料1 昭和34年7月10日案 原子力損害賠償保障法(第一次案)

資料2 昭和34年10月27日案 原子力損害賠償保障法案

資料3 昭和34年12月12日答申 原子力災害補償専門部会答申

資料4 昭和35年1月28日案 原子力損害賠償保障法案

資料5 昭和35年4月2日案 原子力損害の賠償に関する法律(案)

資料6 閣議請議案(謄写版刷り) 原子力損害の賠償に関する法律案







書評掲載案内

■2015年11月24日号『週刊エコノミスト』評者:橘川武郎氏(東京理科大学大学院教授)