書籍詳細:保険金不払い問題と日本の保険行政

保険金不払い問題と日本の保険行政 指向転換はなぜ起こったのか

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  • 紙の書籍
定価:税込 5,940円(本体価格 5,400円)
在庫なし
発刊年月
2011.08
ISBN
978-4-535-55686-7
判型
A5判
ページ数
268ページ
Cコード
C3031
ジャンル

内容紹介

2005年から2008年にかけて起きた民間保険会社による保険金不適切不払い・支払い漏れ問題発生の要因と背景、行政当局の対応を分析。

目次

序章 問題と構成

1. 研究の問題と目的

 1.1 本書が対象とする問題

 1.2 本書の目的と仮説

2. 本書の構成

 2.1 保険金等不適切不払い・支払漏れ問題の発生と行政対応

 2.2 問題への公的関与の制度的枠組み

 2.3 保険規制監督行政の国際比較

 2.4 公共政策分析としての保険不払問題への行政対応

 2.5 検証: ステークホルダーが保険規制監督行政に望むもの

 2.6 総括: 保険規制監督行政の転換と今後の課題

3. 日本の民間保険業界と保険規制監督行政の素描

 3.1 日本の民間保険業界の素描

 3.2 日本の保険規制監督行政の素描

4. 本書の先行研究と新規性、並びに規制監督をめぐる行政活動への含意

 4.1 本書の新規性

 4.2 本書の行政活動一般への含意

5. 本書の資料・データの収集方法等



第1章 保険金等不適切不払い・支払い漏れ問題の発生と行政対応

1. 問題の所在と分析の視角

 1.1 問題の所在

 1.2 分析の視角

2. システムズ・アプローチとVモデル

 2.1 システムズ・アプローチ

 2.2 Vモデルによるアプローチ

 2.3「ソフト」なシステムズ・アプローチとしてのVモデル

3. 保険金支払システムへのシステムズ・アプローチの適用

 3.1 保険金支払システムの社会システムとしての特質

 3.2 保険金等の不適切不払い・支払漏れの事実関係

 3.3 支払漏れ及び不適切不払いの発生と社会システム思考の欠如

 3.4 不適切不払い・支払漏れへの行政対応と「意図せざる」Vモデル適用

 3.5「意図せざる」Vモデルアプローチ

4. 小括: システムズ・エンジニアリング思考にもとづく業務改善態勢の構築



第2章 不払い・支払い漏れ問題への公的関与の制度的枠組み

1. 問題の所在

2. 分析の視角及び金融規制監督に関する先行研究

 2.1 金融規制監督の意義

 2.2 ガバナンスと応答責任:金融規制監督行政の理念形

 2.3 金融規制監督行政の4つの理念形

 2.4 金融監督規制の4類型とルール設定/執行の関係

3. 日本の保険規制監督行政の局面シフト: 業務遂行への規制監督規定を中心にして

 3.1 保険金不適切不払い・支払漏れに対する行政処分に関する先行論文等

 3.2 わが国の保険規制監督に関する法体系の歴史的俯瞰

 3.3 不適切不払い・支払漏れに対する行政処分の法的枠組み

 3.4 保険規制監督の局面の推移

4. 行政指導から行政処分へ

 4.1 旧大蔵省時代の行政スタイル

 4.2 金融庁(金融監督庁)の行政スタイル

5. 小括: 日本型保険規制監督行政の変容



第3章: 保険規制監督行政の国際比較

1. 分析の視角

2. 米国の保険規制監督行政

 2.1 規制の設定: 契約者保護の重視

 2.2 執行:「消費者の目」を活用するソフトな執行戦略と訴訟・ADR

 2.3 コンプライアンス指向と強い募集規制の組み合わせ

3. 英国の保険規制監督行政

 3.1 規制の設定: 金融サービス市場法とFSAハンドブック

 3.2 手厚い募集規制:COBとICOB

 3.3 執行:多数の行政処分発出

 3.4 FSAハンドブックで頻繁に改訂の規制設定と果敢な制裁戦略

4. ドイツ・フランスを中心としたEUの保険規制監督行政

 4.1 規制設定のハーモナイゼーション:EUの保険に関する諸指令

 4.2 ドイツの保険規制監督行政:規制と執行組織の分離と低調な執行戦略

 4.3 フランスの保険規制監督行政:規制と執行組織の分離と苦情相談への公的関与

 4.4 分掌と機能分化

5. 日本の保険規制監督行政の位置付けへの含意

6. 小括: コンプライアンス指向の国際潮流でのコンバージェンス指向の先進性と課題



第4章 公共政策分析としての保険金不払問題への行政対応

1. 問題の所在と分析の視角

2. 複数の政策過程分析モデルの重層的適用の方法論と先行研究

 2.1 アリソン「決定の本質」と公共政策学における先行研究

 2.2「アリソン型アプローチ」の金融規制監督分野における先行研究

3. 「ごみ箱モデル」としての保険金不払い問題への対応

 3.1「ごみ箱モデル」

 3.2 保険金不払問題への対応と「ごみ箱モデル」

 3.3 損保支払漏れへの対応

 3.4 生保請求案内漏れへの対応

 3.5 保険金不払問題への対応における「ごみ箱モデル」の特色

4. 「政策の窓モデル」としての保険金不払い問題への対応

 4.1「政策の窓モデル」

 4.2 保険金不払問題と「問題の窓の開放」

 4.3 保険金不払問題における政策コミュニティの動向

 4.4 保険金不払問題における3つの流れの合流とその特色

5. 「公共政策分析」としての保険金不払い問題への対応

 5.1「公共政策分析モデル」

 5.2「公共政策分析モデル」の保険金不払問題への適用

 5.3 保険金不払問題の公共政策分析における特色

6. 現実の政策と公共政策分析による政策選択肢の比較検証

 6.1 プー・コンセプト・セレクション(Pugh Concept Selection)

 6.2 保険金不払問題の政策選択肢の比較検証

 6.3 比較検証の含意

7. 小括: 政策決定過程の現実と最適の政策パッケージ立案のための方法論



第5章 検証: ステークホルダーが保険規制監督行政に望むもの

1. 検証の目的と方法論

 1.1 階層分析法(Analytic Hierarchy Process)

 1.2 保険規制監督行政:AHPによる階層化

2. AHPによる調査の具体的方法

 2.1 ステークホルダーの選定とアンケートの実施、属性の予備点検

 2.2 消費者の群

 2.3 保険会社役職員の群

 2.4 金融規制監督当局職員の群

3. AHPによる検証結果

 3.1 消費者の群のAHP総合評価値

 3.2 保険会社役職員の群のAHP総合評価値

 3.3 金融規制監督当局職員の群のAHP総合評価値

4. AHPによる調査結果の含意

5. 小括: コンバージェンス指向へのシフトの支持



第6章: 総括: 保険規制監督行政の転換と今後の課題

1. 本章の目的及びこれまでの議論のまとめ

 1.1 アコモデーションの担い手としての保険規制監督当局

 1.2 行政の局面転換の担い手としての保険規制監督当局

 1.3 政策事業家としての保険規制監督当局

 1.4 公共政策分析システムの設計者/分析者としての保険規制監督当局

2. システムズ・アプローチによる政策選択肢の設計者/分析者としての行政官

 2.1 ウィルソン型二分法にはない行政活動モデル

 2.2 政官競合モデルではない行政活動モデル

 2.3 新しい行政活動の行動モデル

3. 日本の保険規制監督行政の転換とポスト・グローバル金融危機

 3.1 ベター・レギュレーションから「規制の再強化」(re-regulation)への逆行?

 3.2「規制の再強化」(re-regulation)の真の意義

4. 行政活動一般への含意と政策提言

 4.1 政策提言

 4.2 行政官への本研究の「物語性」

5. 今後の研究課題



参考文献

謝辞

索引

書評掲載案内

■2011年10月31日付『週刊金融財政事情』11.7秋季合併号

■2011年11月27日付『日本経済新聞』