齋藤正彦先生・細井勉先生への亀書房代表・亀井哲治郎氏による追悼文

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昨年暮れ、数学者の齋藤正彦先生と細井勉先生が相次いで亡くなられました。
お二人と長く親交のあった、元『数学セミナー』編集長で、現在は亀書房代表である亀井哲治郎氏にお二人への追悼の文章をいただきましたのでここに掲載いたします。(亀井氏のFacebookに投稿したものを一部改変して掲載)

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齋藤正彦先生

齋藤正彦先生が,2020 年 12 月 31 日に亡くなられました。
1931 年 6 月のお生まれですから,行年 90 (満89歳)。
ご葬儀は 4 日にご家族で済まされたとのこと。

処女作『線型代数入門』(東京大学出版会) は,1966 年の出版から 55 年近く経ちますが,いまなお
多くの人に読まれています。超ロング・セラー! 2006 年度 (第 2 回) 日本数学会出版賞を受賞さ
れました。

私は『数学セミナー』時代から,たくさんの仕事でご一緒し,親しくお付き合いいただきましたが,
いちばんの思い出は,
齋藤正彦・廣瀨健・森毅編
《シンポジウム数学》全 5 冊,数学セミナー増刊,1980 年-1983 年
第 1 巻・・・・・『数学と教育』
第 2 巻・・・・・『数学と諸科学』
第 3 巻・・・・・『文化のなかの数学』
第 4 巻・・・・・『数学研究の最前線』
第 5 巻・・・・・『数学と現代』
です。齋藤先生の発想から生まれた,極めて独創的な企画でした。

なお,齋藤先生のご経歴などは,下記の Wikipedia に記載されています。

ウィキペディアの齋藤正彦先生のページ

謹んで哀悼の意を表します。
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★細井勉先生:

 

細井勉先生が,2020年12月28日に亡くなられたそうです。
昨日 (5日),妹さんからお電話を頂戴しました。
1937年のお生まれなので,満83歳。
ご葬儀は,ご家族のみで済まされたとのこと。

亡くなられる数日前に,いつものように人工透析に行かれたのですが,その病院で体調が悪くなられ,
28日に亡くなられたそうです。

10年くらい前から,週3回の人工透析に通うようになられたのですが,長時間の透析のあいだに,本
を読んだり,医者や看護師と数学の話をしたりして,楽しみを見出しておられたようです。

私は日本評論社時代から,『数学セミナー』や何冊もの単行本でお世話になりました。
とくに晩年は,ルイス・キャロルの研究に打ち込んでおられ,いわば “十分な数学感覚をもった者
(数学者というべきか?) でなくては見えてこない・読み取れない” 数学者キャロルの《たくらみ》
の数々を読み解いて,私たちに見せてくださいました。
キャロル晩年の作品『シルヴィとブルーノ』『シルヴィとブルーノ・完結編』の完全訳+注釈を仕上
げられましたが,その原稿全体はまだ拝見していませんでした。ですが,そのエッセンスは,『数学
文化』第33号+第34号の「ルイス・キャロルの『シルヴィとブルーノ』」で紹介されています。

なお,細井先生と親しくしておられた英文学の先生からうかがったところでは,最近はミルトン『失
楽園』の新訳・注釈に意欲を燃やしておられたとのこと。

謹んで哀悼の意を表します。

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